2024年11月03日

「コインランドリー・セレナーデ」とは何か。

先日無事に終幕した、CriticalCreation「コインランドリー・セレナーデ」を振り返ってみたいと思います。超長文です!
念の為ご覧頂いていないけど記事を読まれる方の為にあらすじから。

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夜、静かな住宅地のコインランドリー。
男は洗濯機を回しながら黙々と書き物をしている。
そこへやって来た女は、自分も洗濯を始めると、ためらいがちに男に声をかける。「それ、何を書いてるのですか?」
男が話すのをためらっていると、女は自分もよくこのランドリーに通っていて、以前ナンパしてきた大学生から助けてもらったと話す。
その事を思い出しやっと気を許した男は「手紙を書いています」と語り始める。
女は手紙を書いているというこの男に興味を持ち、ほのかな恋心を抱いたまま文通を続けたこの男の話を興味深々に聞く。
一か月半前に亡くなった女の母も古くからの友人と文通をしていて、男の話と母から聞いた父に関する数少ない話が部分的に重なる事から、そんな偶然があるはずはないと思いつつも、女はこの男が母の文通相手で、しかも自分が一度も会った事の無い父親かもしれないと考える。
しかし、男は確かに母の同級生で文通相手ではあったが父親では無かった。
女は落胆と安堵を同時に抱えてコインランドリーを去る。男は今はこの世にいない、大切な人に向けて再び手紙を書き始める。

といったような、ピュアなラブストーリーです。
まさかラブストーリーとか演出する日が来るとはねww
ま、嫌いじゃないし自分で選んだんだけどww

まずは今回の火ゲキ参戦の経緯から。

10/15は今シーズンの火ゲキのレギュラー最終日です。(10/22は30リーグ最終戦、10/29は劇場通常利用なので)
早くからこの枠は埋まっていたのですが、火ゲキチラシの準備を始める段階になってキャンセルになってしまい枠が空いてしまいました。
今から募集しても埋められないと嘆く火ゲキブッキング担当の上田ダイゴ氏の「火ゲキ実行委員関係者で何とかならないか?」との発言に、池山ユラリが「出演なら…。」と言いこちらをチラッと見た。のは僕の気のせいかもしれませんが、以前からCCで上演したいとストックしている戯曲が何本かあり(毎年今年は火ゲキに出ようと思ってるんですよ!結局忙しくて実現まで7年もたったけどww)、そのうちの1本の主演に池山ユラリがぴったりかもと思っててという話は以前していて、そのタイミングが来たか…。しかし9〜10月鬼のように忙しいが…。と頭の中を駆け巡った結果「CCで一枠やってみますか…。」と言ってしまったのがたぶん8/20。

でユラリ主演で考えてた脚本が本当に火ゲキフォーマットに収まるか検証すると、全然時間オーバー!他のストックで収まるの無いか探るがどれも収まらない事が判明し青ざめるww やるっていったけど本が無いぞ…。しかもキャスト一人決まってるし…。
あせって劇作家協会の戯曲デジタルアーカイブとかも漁りましたが、そんな中ふと思いだしました。ご縁で読んだ未発表未上演の戯曲。確かコインランドリーを舞台にした若い女性とおじさんの二人芝居で、文通を軸にした1幕もの。
火ゲキの当日パンフにも書きましたが、僕も中〜大の頃に文通をしていた経験と、大学時代コインランドリー通いしていた経験があり、何か親近感があって気になった作品。
上演母体を持たずひっそり作家活動のみされている足立大雨さんに早速連絡を取ってみました。今回が初演になること、戯曲にいくつか引っかかる描写やセリフがあり上演する上で修正したい事などがあり、上演許可を貰うのは難しいかな?と思いましたが、ご快諾頂きまして、キャスティングに進みました。

脚本が決まって一安心したのも束の間、もう一波乱あります。戯曲を改めて読んで、この人に頼めたら良いなぁ、でも引き受けてくれ無さそうだなぁという方に、ええいダメ元でと突撃オファーをした所、まさかの快諾を頂いたので大喜びしていたら、急な事情の変化で数日後に出演がかなわなくなりました…。振り出しに戻った!
既に出演の決まっているユラリも巻き込んで、相手役を誰にお願いしようかとLINEでキャスティング会議。
9月中旬には彗星マジックの本公演があるので、それが終わってからしか稽古開始できないので、作品製作としてはどうしても短期決戦になる。となるとどんなに良い俳優さんでも初めましてに近い、今から新たに関係性を結んで行くというのは流石に無理がある…。などなど色々考えた結果、「いるじゃん、身近に良い人!」となったのが野倉くん。
彗星マジックにも何度も客演して頂き、まさにそのタイミングも彗星カランコロンの稽古中。ユラリとは共演しているものの、役柄上あんまりガッツリ絡んで芝居をしていないし、今回の役柄に空気感があうし、ベストじゃない?強いて言えばもうちょっとおっさんぽい要素が欲しい所だけど、そこは役の解釈と演出でカバー!
で野倉君にオファーしてご快諾頂いたのがたぶん8/30。

紆余曲折ありましたが、何故か頼んだ人はみんな快諾してくれるww

こうして、彗星カランコロンの準備(照明プラン)と並行して、戯曲の上演台本への書き換えと作家さんへの許可、演出プランの検討を進めました。なんせ短期決戦で稽古は8回(そのうち1回は合同通し)だけだから、下準備がとにかく大事!

とある方からもXで指摘がありましたが、CCの近作と言えばプロジェクションマッピングにムービングにサラウンドスピーカーと、日常と隣り合わせのちょっと不思議な物語をテクノロジーで視覚化するような作品に取り組んできました。
今回の作品はコインランドリーを舞台に、手紙が繋いだラブストーリーの会話劇。どこにもテクノロジーの要素はありません。
意図的な訳ではありませんが、今回は自分の得意技は全部封印して、物語と俳優に全集中です。そもそもCCの命題は挑戦。今回は演出に集中がテーマになりました。

演出作業のスタートは、戯曲の読み込みと選曲から始めることが多いアイウチです。ピタリとハマる曲が見つかるとそこから他のイメージや芝居の要素が膨らんで行く気がします。まずは、そのものずばり「コインランドリー」が曲名か歌詞に入っている曲を片っ端から集めてみました。想像以上に沢山あって、そう言えば昔コインランドリーが舞台のドラマもあったな…。クリエイター的には、長くとどまらない中継点的な場所だから、何かドラマを生みそうな予感がするんかね〜とか考えながら片っ端から聞く。
そんな中「これだ!」ってなったのがヤングスキニー「コインランドリー」。



オシャレで控えめなイントロに「心まで綺麗にしてくれる 家の近くにあるコインランドリー」から始まる歌い出し。キンソン(M0)にドンピシャじゃないか。客電が暗転していくタイミング、板付きして音が下がって行くと洗濯機の回る音が聞こえ灯りが入って来る…。所まで一気にイメージがわきました。
今回の舞台はコインランドリーで、大体のシーンで常に洗濯機が回る音が鳴り続ける。物語の進行でそれが止まる部分もト書きがある。
ただ、洗濯機のSEだけ延々に流れると、逆に台詞のノイズにならないかな…。とも気になっていました。
じゃぁいっそ店内BGMってことで、音楽かけ続けようか?かかってる音楽が別の空気感をうっすら足してくれて、洗濯機の音ばかりが悪目立ちするのも消せるんじゃなかろうかと…。(実際にはほとんどのランドリーは音楽かかってないんだけど、たまにお洒落インストとかかかっている所があるんですよね〜)
で集めたコインランドリーにまつわる曲たちを並べてかけてみましたが、これがジャンルも曲調もBPMもてんでバラバラで統一感が無い訳です…。あ、違うなと。これしっかり選んでかけないとダメな奴だと。
で、夜の情景と芝居の空気感にあうチルな感じのちょっと洒落ただるい感じの曲、かつボーカルが前に出すぎていない奴を探してDJミックス風にしました。普通に曲が終わって途切れ目があって、そこに芝居上の沈黙や間がたまたまあったりしてしまうと意図を感じてしまうので、常に切れ間なく曲がかかる感じに。芝居のラストではいつの間にか音楽終わってて、そう言えば最後音楽鳴ってなかった…って、観終わったあとふと思い出すのを期待して29分ほど。

続いては、エンディングです。最後は少しあざとくても芝居を締めくくってくれるような良いバラードが欲しいなと考えていました。ドラマでもラスト辺りでイントロから静かに流れだしてラストシーンからのエンドロールに繋ぐあの演出です。ドラマじゃないし曲調違うけど「Get Wild」のかかり方ですねww
とはいえ可能性は無限大、選曲には何か取っ掛かりが欲しいですね。M0で「コインランドリー」から始めたので、ここはベタに「セレナーデ」で行きましょう。という事で「セレナーデ」を含む曲を集めた中にあったのが、Uru「セレナーデ」。



イントロが長めで冒頭部分の歌詞が部分的に男が彼女に出会った頃の心情に重なる感じがしつつ、決め手は「君を知らない誰かになれたら きっと楽になれるのに」という部分。なのでここの歌詞で曲を煽って暗転していきます。この文通を通した交流は男にとって幸せな時間であると同時に、ある意味呪いで、彼はこの先の人生もそれから逃れられないだろうと僕は感じたので…。
ただ、採用するかはかなり悩みました。かなり売れてるアーティストだし、この曲も結構知られているかな?曲に付いてるイメージに引っ張られたくは無いので…。ただ、シングルのC/Wでタイアップでは無かったのと他に最適解が見つからなかったので、決めました。

選曲と戯曲の読解&手直しを進めている中で、この作品自体はここで終わりだけど、二人の物語にはまだ先があるような感触が強く残りました。女は「もうお会いする事は無いと思います。」と言っていますが、それは本心の言葉なのか?男はこの後、本当に大切な人(のお墓?)には会いに行かないのか?
作品の終わり方や観劇後の余韻にも大きく影響する部分なので、こちらで修正した上演台本を確認してもらう時に、素直に作家さんにたずねてみました。
すると、具体的な構想は無いし書くかもわからないが、二人のその先は何となくイメージしているという応えを頂きました。
じゃぁ、それを観た方にもより感じてもらえる演出にしたいなという事で、ラストにエピローグ的な部分を追加させてもらいました。
戯曲では女がコインランドリーを去り、男が手紙を再び書き始めるところで暗転するのですが、男が手紙を書く描写と女が道端でふと母が受け取った最後の手紙を見つめる部分を追加しました。こうすると丁度ED曲の聞かせたい歌詞まで引っ張るのにも丁度良い長さに…。ピースがハマってる感じがしました。

さて、彗星カランコロンが終わって1週間後の9/24いよいよ稽古が始まります。二人に読んでもらうと25分強。おぉ火ゲキにピッタリ!とこの時は思ったんだよ…。あとであんな事になるなんて。そこで会話劇の演出経験の未熟さが露呈する訳です。
キャスティング時点で戯曲や登場人物とのマッチングは計算できているわけで、スタート時点としては申し分なく。ただ、戯曲を読んでいた時はそれほど感じていなかったのですが、俳優の身体を通すと「二人ともめっちゃ話す!」がより浮き彫りになり、お互いが話す動機をきちんとイメージして整理していく事が重要なんだと気づきました。そしてこれは戯曲時点で分かっていたけど、この30分で女は、男に関しての興味の持ち方がジェットコースターのように変化し続けるので、どの時点でどのように感じている・考えているかを丁寧にたどらないといけない。
良い感触とこれはめっちゃ大変だぞ!が同時に訪れた初回稽古でした。

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その稽古後、宣伝用のイメージ写真を撮影しようと1st近くのコインランドリーを訪ねましたが、洗濯している人が居て断念。他のランドリーを求めて散策を続けました。この辺凄いランドリーがある事が判明するも、みんな人が居てなかなか撮影できず、最後に見つけた一軒が無人だったのでダッシュで撮影を敢行!絶対人が写り込んじゃいけないし、まぁ誰にも迷惑はかけてないけどゲリラ撮影だし、可能な限り短時間でという事で5分位でババっと撮りました。何故か来ていた勝山氏と2人体制でww なので今回のビジュアルはメインカットがアイウチ、アザーカットは勝山の撮影です。

さて、既にめちゃくちゃ長文になってるけど、大丈夫?みんなついてきてる?
まぁこのブログは自分の備忘録みたいなもんだから、ついてきてなくても書きます!


読み稽古を2回やって1週目は終了、翌週立ち稽古に入りました。といってもこの芝居、ほとんどの時間座ってるんですけどww
稽古開始前の演出プラン時に舞台上の空間設定と必要な道具類は決めていました。実際に俳優さんにその位置関係でやってもらって、違和感が無いか確認してもらいます。冒頭初対面の二人がどんな位置でスタートして、どこで距離感に変化が起こるか?
実際に試してみると、基本的にはイメージしていた通りになったので、あとはお二人に任せました。やり取りの中で「ここで立ちたくなる」とか「身を乗り出す」「イスを動かして少し距離を詰める」「体の向きを変えて視線を避ける」など自由に試して貰いましたが、稽古の中でこれが演技の気持ちの上でも観客側からの見た目でも自然という所に収まって行きました。この自然と収まる所に収まるという感じが今回は大事だと思いました。これが前回公演cc6の「ゆきのふる」だと、「このシーンではこういう二人の画を見せたい」が先にあって、逆算してそこに辿り着くように動きや心情を整えてもらっていく感じだったので、真逆に近いアプローチですね。

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で、セリフを入れつつ稽古をしていくと、さらに色々気づきます。男は「同じことを、表現を変えて重ねて言う癖がある」とか、「話しているメインの話題の間に一瞬別の情報がインサートされることが多い」とか。女の「反応のセリフが男の最後の言葉ではなく、その前の言葉を受けての事が多い」などなど。それが、セリフの覚えにくさに繋がっている部分もあり、三人で色々解きほぐしていきました。
例えば「間に別の情報が入るのは、思い出しつつ話していたり、その時に浮かんだことを割と口に出すタイプの人なのでは無いかと解釈するとやりやすいんじゃないか?」とか、「ここは口ではこう言っているけど、逆の気持ちだよね?」とか、「男はだいぶ思い込みの激しい要素もあるよね」とか、「母も男に対して手紙の中で仕掛けた事があって、男の「向こうにも気になる人がいる雰囲気だったし」とかは、男に思わせぶりな事を手紙で書いて、焦らせて告白に持ち込ませようとした結果、裏目に出てしまったパターンなのでは?」など色々考察していきました。
本筋には直接は関係ないこうした読み解きに随分と三人で時間をかけて、芝居のガイドラインにしました。

基本的には体育会系な文化部員だった僕としては、稽古や身につける、覚えるには反復が大事っていうタイプなんで、当初は全体を3つのパートに割って、それを反復してどんどん固めて行こうと考えてたんですが、1回そのパターンで稽古してみて、これで行くと全然感情の流れがつかめなくて、却って難しいとお二人から指摘を受けました。なので一発で撤回。以後は基本頭から最後までの通ししかしなくなりました。

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ユラリが彗星のnoteで「相内さんの演出はめちゃくちゃ役者の話を聞いてくださって。言い訳まで聞いてくださって」って書いていますが、まぁそれはその通りなんですが、別に褒められる事じゃなくって自分にはそれしか出来ないからなんですね。
これ、勝手に思ってる事で実際の所はそうじゃないのかもしれませんが、小劇場の大抵の演出って俳優経験者ですよね。スタートが俳優だったり、自作以外では俳優としても活動していたり。だから、演出してるときも自分だったらこう表現するとか、こうして欲しいがしっかりあるんじゃないかな?
僕の場合は俳優経験が全く無いので、自分ならこうするは絶対出てこないので、俳優がそれぞれが出してくれるものを素直に受け取って、どうしてその表現になったのか、それを選択したのかをとにかく俳優から聞きたいんですよね。それこそ上手く行かない言い訳も含めてww
その上で自分が脳内で組み立ててたものとどう違うか、どっちの方が好みか、あるいはもっと他が無いのかを探りたい。時間かかっちゃうんでまどろっこしいと思う俳優さんも多いと思うんだけど、現状それしかできないので。
あとは、部分的にどうしてもここはこのニュアンスやこの言い方でお願いしたいという箇所はあるものの、比較的演技のストライクゾーンが広めだと思います。だから自分の解釈やお客さんに受け取ってもらいたい感覚から大きく外れなければ、俳優さん同士で生まれるもので自由にやって欲しい。
例えると、演出の敷いたレールに乗ってもらうんじゃなくて、道幅広めの道路を設定して、その範囲内なら自由に走ってもらう。道から外れそうな部分は柔らかいガードレール(演出指示)で道路に戻ってもらう。って感じかな?

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2回立ち稽古をしたあと、三人のスケジュールの関係で少し稽古が空きました。次はもう火ゲキ恒例の合同通し(スタッフ見せ)です。(俳優二人は間に1回自主稽古を挟んでくれていましたが…。)
結果、上演時間が37分でした! 三人で頭を抱えて「何でこうなった?!」ってなりました。火ゲキは30分フォーマットですので、大幅オーバーです。でも前週の立ち稽古では30分前後をさまよっていたのに…。
理由は意外とはっきりしていて、二人共が全て素直に相手の感情を受け取り合った結果、どちらも感極まってしまって、かなりたっぷりの芝居になってしまったのでした。セリフが入って、芝居に集中できるようになった結果、感情が乗りすぎちゃったパターンです。
同時にそれによって、そうなるとこの作品の受け取られ方の幅が狭まってしまう事も見えました。
この戯曲は「そんな偶然あるはず無いけど…」がベースに流れていて、「でももしもそんな偶然があったら素敵かな…」って方向に持っていきたいのに、二人が揃って感極まってしまい過ぎると、観ている方が醒めてしまって、そんな綺麗な話あるはずがないって感じてしまう可能性が増えてしまうんです。
あとは個人的に、感情ダダ流しよりも、何とか堪えようとするのに、時に決壊してしまう、という方が好みなのもあり、終盤3回の稽古ではひたすら通しを繰り返して、感情の流れを改めて整えて行く事になり、お二人にはご負担をかけたなと思います。(反省!)

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稽古と並行して取り組んでいたのが、背景音となるコインランドリーのSEの収録。フリー音源の効果音なども当たりましたが、クリア過ぎてリアリティが無かったり、リアルと脳内イメージの違いからしっくりこず。実際にフィールドレコーディングする事にしました。
単独で1台が回っている音声を開始から終了(最低20分)まで収録しなくてはならない為、無人で他の人が来ない隙をつかなくてはなりません…。
どんな時間も意外に人が居る事が多くて、1st近所のコインランドリーを何度か定点観測して人の居なさそうな時間にアタリを付け、実際には金曜23時頃と日曜9時頃に収録チャレンジしました。金曜は録音中に他の方が来てしまい失敗…。日曜朝に無事開始から終了まで20分をフルで収録できました。それを加工し、既存音源とも混ぜ合わせるような形で今回のSEを完成させました。

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本番のオペレーションでは、ところどころで二人の沈黙がより強調されるように、気づかない程度にSEの音量を上げ下げしてもらっています。火ゲキ音響チーフ廣岡さんのグッジョブです!

照明に関しては、今回は完全な1幕もので、一度回想シーンを挟むのと、ラストシーンでそれぞれのエリアサスに絞られる演出があるくらいで、極めてシンプルです。ラストシーンに関しては曲の進行でキッカケを決めているのですが、男にサスが絞られるタイミングとフェードの速さは俳優の芝居合わせなので、火ゲキ照明チーフ高木さんのグッジョブです!

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さて、全然客席からは見えないだろうけど、地味にこだわったのが小道具です。
劇中の便箋は実はオリジナルでこのためにデザイン(というほどでもないですが)した小道具です。劇中で女は男が原稿用紙に小説を書いているのでは無いかと推測しています。つまり縦書きで横長の紙でなくてはなりません。ですが、探し回った結果、そんな便箋はこの世に存在しませんww 縦書きの便箋はやはり紙も縦長、そして大きくてもB5程度です。文面は見えなくても、紙のサイズや雰囲気は同じ空間に居ればわかってしまいます。つまり、戯曲の嘘をリアルにするためには、そう勘違いするような実物が無いと不自然になってしまいます。ので、A4横サイズで縦書きの便箋をオリジナルで作成したわけです。

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100均で売られているA4原稿用紙の表紙をデザインして差し替え、中の原稿用紙もデザインしたA4縦書き便箋に差し替え、和便箋には左下角にメーカーのロゴとかちょっとしたデザインが入っている事が多いので、地味にCCのロゴを入れてみました。
Xでペンに関して「手紙を書く人はもっとイイものを使ってるんじゃないだろうか?」というご指摘があり、確かにと思うと共に、そこがこの男の詰めの甘い感じのキャラ設定のつもりでした。いい意味でコダワリがない、だから便箋もシンプル。彼にとっては手紙を書き続けることだけが大事でそれ以外の事には目が向いていない。その不器用で無頓着な感じが、女の母も何だか憎めないという解釈で書きやすさ重視の普通のボールペンにしました。

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あとは劇中で出てくる男が女の母に出した手紙。これも客席からはほぼ見えないですが、切手や消印の有無には気づく方がいるかもしれないので、自宅から1st宛にダミーの手紙を出して小道具にする事にしました。宛先の文字までは流石にみえないのでww
ところがここで誤算が…。
本番に間にあうつもりで前週の週末に出したのですが、月曜が祝日であったために到着が遅れ、実はこの写真の手紙は本番に間に合いませんでした。ので、実際の本番で使われたのは、バックアップとして用意していた、恥ずかしながら僕が文通していた友人からの手紙の封筒を使いました。

さて、こんな感じで膨大な長さで振り返って来ました。
もともと、個人的な体験と重なる部分があり、「刺さる人にはめっちゃ刺さる」作品になれば&内容に共感できなくても、平日夜にちょっと良い話観たな〜と帰ってもらえるようなものになればと思って創作に臨みました。
Xでの感想などでは、想像以上に刺さってくれた方もいたようで、ほっと胸をなでおろしております。
振り返り記事も書きましたし、あとはゲネで撮影した3カメ映像を編集して、作家さんに送れば無事プロジェクト完了です。
作家さんがこの上演の映像を観て「続き書くか〜」ってなってくれたら良いなと。そしてそこにまた三人で取り組めたらと今は思っています。

では最後に本家(二朗松田)をまねて、最後に一曲いきますか。
コインランドリーという曲名で集めた劇中未使用曲の中からのお気に入り。
sarA で「コインランドリー」


posted by アイウチ at 17:11| Comment(0) | TrackBack(0) | works | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする