2025年02月24日

「代アニ大阪校卒業公演2025」とは何か。

先日、代々木アニメーション学院大阪校エンタメ学部の卒業公演に照明として入っておりました。今回は、この大変だったけれども、喉元過ぎれば楽しく充実していたと感じる公演を振り返りたいと思います。
で、この記事、あまりにも現場がバタバタしていたので、舞台や灯りの写真が全然ありませんww ひたすら文章続きます〜

事の発端は1年ほど前に、彗星マジックに客演してくれていて、この前の僕の作品にも出演してくれた野倉良太くんからインディペンデントシアターの空きスケジュールの問合せがあったとこから。働いている代々木アニメーション学院の卒業公演をという事で、ついては照明もお願いしたいと。
思えばこの時、もっとしっかり色々聞きだしておくべきでした…。まさか2日間の本番でライブが1本、演劇が2演目3ステージあるなんて。その場当たりリハが1日半しか無いなんて。まぁ聞いてても引き受けた事は変わらなかったと思いますがww

「予算的にも時間的にも制約が大きいので、出来る範囲でやって頂ければ」というご依頼でしたが、そんなん言われると俄然頑張っちゃうよね?!
とは言いつつも、3演目本気でプランしたら、仕込み量もデータの打ち込みもトンデモない事になるので自分でも今回はほどほどでと思ってスタートしたんですが、転機は通し稽古を観た日かな?

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本番約2週間前の1月末に終日、4演目の通し稽古を観て打ち合わせをするというハードDAYがありました。それぞれ70〜90分ある演目なので、観るだけで大変!記録映像を回しているとはいえ、見逃しちゃいけない立ち位置や移動だらけなので、脳みそパンク状態です。
拝見した通し稽古は、正直拙い感じでした。ただ、真面目で一生懸命なのは伝わってきたし、その日も通し稽古で代役などのトラブルがありつつもお互いをカバーする感じとか、青春してる!っていう空気感で、おじさんはそういうのに弱いんだよ!(2.5次元は流石に舞台俳優を目指しているだけあって、期待以上でした。)
照明は劇場に入るまで彼らの目には触れないわけで、そうなると劇場で初めて自分たちを照らす灯りを見た時に「ヤベぇ!超カッコいい!」ってなってテンション上げて一段パフォーマンスが上がるような事をしてあげなきゃってなっちゃうよね…。

今回、舞台の奥半間が尺高で一段上がる舞台で、そこを別エリアとする演出が多い関係から、近い構造だった約1年前の彗星マジックWS公演ギフト「アルバートはなして」の仕込みプランをベースに(何だったら灯りのデータも少し流用できるかな?)などと考えていたのですが、結果、原形を留めずその1.5倍ほどの量を仕込み、自分の手持ち機材もほぼ総動員となりました。
プランで悩ましかったのは、1作品で下手花道がガッツリ動線となり、デハケ量の1/3くらいで花道と舞台下も使用するため、フットやSSを一切仕込む事が出来ない事。でも舞台上のライン(エリア)分けは必要で、ナナメだけではフォローできずSSが欲しい!
ので、前回彗星公演で大活躍したラダートラスで俳優には届かないギリまで高さを下げて、やや打ちおろし気味のSSを何とか確保する作戦を取りました。
マジ、ラダートラス最高!

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1つ目の演目は「声優アニソン科のライブ『始まり』」
ワンコーラスやメドレーも含みますが、全20曲。当たり前ですが、ジャンルもアーティストも様々、もちろん歌う人も変わります。聞き馴染みのある曲も幾つかありますが、初めて聞く曲もありました。さて、どう灯りを作るか。普段音楽ライブの照明はしないし、自分で観に行くライブはPerfumeとか照明と映像の演出ヤバすぎる奴なので、参考にならないww 何より、20曲を全部曲展開にバッチリ合わせて灯り作っていたら全然時間が間に合わないし、QUEが多すぎて本番処理できない…。でも良い感じにしたい!
という事で、各楽曲のライブをYoutubeで探して観て、その要素を抽出しました。つまりアーティストのライブ映像と音楽番組出演時の映像、曲のPVがライブ系だったらそれも参考にしました。
それをそのまま再現するんじゃなくて(そもそも無理)、色のイメージや方向性、サビの画の雰囲気などを寄せる方向で灯り作りしました。視覚的に飽きさせないように、QUE数をある程度制限しつつ、変化する時には画がガラッと変わる感じを目指して作ってみました。
良い感じになっていたら良いのですが〜

2つ目の演目は「2.5次元演劇科の演劇(SF)『BLACK FLAG BLUES』」
宇宙船内がメインとなる会話劇ベースのSF作品ですが、終盤にがっちりの殺陣(アクション)があり、設定上は超高速で動くというシーンなので、照明的にも見せ場の一つ。あとは、狭い舞台上をエリアに区切って別空間が同時進行したり、キャストと場所の入れ替わりが頻繁に発生するので、そこをどうシームレスに見せるかがポイント。
この作品は先生ではなく、キャスト達が自分たちで意見を出し合いながら演出していて、稽古で観た時に、デハケなどもかなり複雑なのに整理されていて凄い!と思った。と同時に、これシーン(と灯り)の変わり目のちょっとしたタイミングで、観客に場所や時間が変わった事が上手く伝わる場合と、誤解させてしまう場合があるなと感じていました。
分かりやすいのは、デハケやシーン転換にいちいち転換灯りを挟めば理解はしてもらいやすいのだけど、芝居のテンポが落ちる。今作は中盤以降緊迫した状況が続いて、宇宙船内をキャストが入れ替わり立ち代わり走り回っているので、テンポは落としたくない。可能な限り転換灯りを挟まず、シームレスに場所Aから場所Bの灯りに変化し、そこにキャストが雪崩れ込んでくる形が理想形。それは当然照明だけでは実現できない…。
場当たりの時間が限られていて、冒頭にガッツリのキャスパレを兼ねたダンスがあり、終盤に殺陣がある。ここをしっかり当たるのが安全上も必要だし、とにかく音関係のキッカケが膨大なので、どうしてもデハケや微妙な灯り変化関連のキッカケは飛ばし気味になり、全体の流れが確認できるのはどうしてもゲネになってしまった。
結果、退場キャストと入場キャストのタイミングと灯りの変化(定着)が合わず気持ち悪い部分や、デハケと照明変化が同時に発生して不自然な個所がいくつかあった。当たりなおす時間が取れないのは分かっていたので、不安ではあったが、デハケのタイミングを入れ替えたり、照明変化を待つなどを何か所か提案した。さて、本番にすぐ反映できるだろうか?
結果的には、見事にやってのけてくれました!お見事!良いチームだよ。
灯り的には、宇宙船内がメインなのですが、あんまりベタっとした灯りではなく、カゲや灯りの当たらない場所もある感じにしました。最近の小ぎれいなSF照明じゃなくて、少し前の照明器具によって照らされている空間という事でイメージ的にはエイリアンのノストロモ号ですね。ラストにエアロックも出てきますし!
地味ですけどエアロック解放の照明は個人的にこだわりました。吸い出される空気の揺らぎを感じさせたいし、解放前から点滅している赤色灯の点滅に加えて、エアロック解放のオレンジの警告ランプも点滅したり、SF好きが「アレな!」って納得する画を詰め込みました。
あとは、やはり冒頭のダンスと終盤の高速とスローモーションの入り乱れる殺陣ですね。どちらも短い時間に膨大なQUE数ですが、個人的には割と気に入った灯りが作れました。何より、キャストの子たちが、最初に灯りを見た時に歓声を上げてくれたので、目標はクリアしましたww

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3つ目の演目は「声優タレント科の演劇(ファンタジー)『PLANISOHERE』2チーム」
声優科は午前チームと午後チームに分かれて各1ステですが、午前のメインキャストは午後にサブキャストやモブで出演する感じなので、実際の所ダブルキャストに近い感じ。だからプランやキッカケは基本的に同様です。
やはり声の芝居を中心にしている子たちなので、2.5次元に比べて、身体の使い方が不得意な子も居たり。が作品には全編に剣殺陣が散りばめられ、魔法(技)も使ったりするファンタジー。ちょっとSFの要素もあったりする。これはがっちり音響照明で作品をサポートして世界観を作っていかないといけない奴ですね。
こちらは、舞台下の空間や客席下手の動線もデハケに使ったり、とにかく人数も多くてデハケも多い。デハケを見せたくないシーンも多く、先ほどとは違ってきっちり転換灯りやマスク(目つぶし)を使ってシーンを切り分けて行く方向性です。ズームのあるウォッシュ系のムービングを間口いっぱい横一列5台並べて、サスにも目つぶしにもバトルやダンスの賑やかしにも使えるようにしました。1stだとどうしても奥行とタッパのバランスで、位置によってはマスクしたい時に完全には消せないなど条件の悪い部分もありましたが、結構有効な仕込み方だったので、個人的に今後も流用できそうでした。
マスクの効果も含めて、もっとも悩んだのはスモークでした。声優の子らはスモーク未経験なので(Liveに遊びに行ってとかはあると思いますが、自分たちが演者として)、ガッツリ炊いたスモークに耐えられるか。マスクの為に空間を染める灯りや、照明のビームを見せたり、それこそ魔法を使う時などのエフェクト灯りには、スモークが欠かせません。
初日の場当たり時には、慣れない環境に咳き込む子が居たりしました。演出担当の先生とも相談しましたが、しっかりと喉ケアなどを指導して画の方を優先する方向で進めました。適応してくれたのか、根性で乗り切ったのか、ゲネ・本番を迎える日には咳き込む子はほぼ居なかったようでした。
その甲斐あって後半、次々に登場人物がブラックホールに吸い込まれるというシーンがあるのですが、先ほどのマスク灯りでキャストが奥に行けば消える効果はとても上手く行ったので安堵でした。
通し稽古を見た時に、不足のキャストが居て補い合ったりしている様子や、そうでなくても午前チームと午後チームがそれぞれのメイン役に関する情報を共有したりなど、支え合っている様子は、チームで作品を創るうえでは当たり前の事なんですが、声優を目指す彼らは卒業するとこれからは個人戦になる訳で、この経験を大事にして欲しいなと感じました。
普段自分が良くやるプランとして、吊り位置もシュートもランダムなPARを沢山吊り込む事があります。舞台が素舞台でシンメの時ほど、不規則性が活きる場面もあって個人的に好きな仕込み方ですが、今回それをベースに灯体の吊り位置だけギュッと寄せてみました。
本作のオープニングとエンディングでキャスト全員が中心にギュッと集まるシーンがあります。肩を寄せ合って互いを支え合う彼らになぞらえて、ギュッと狭い範囲に吊り込まれたPARがランダムに外に向かってビームを放ちます。こんなの説明しても「ふ〜ん」な自己満足ですが、僕なりに彼らへのはなむけの気持ちを込めたプランでした。
最終的に、ラストで同じシーン(同じ灯り)の繰り返しが多いという事を差し引いても、膨大なQUE数になりました…。途中休憩が入って2時間ちょっとあった彗星マジックの某作品よりも、80分強のこの作品の方が100キュー以上多いって…。我ながらバグってました。
こちらは先生と演出部?がキッチリ仕切って進めたので、2チームの場当たりも可能な限り交互に両チームで当たって行く形でやれたので、そこはスムーズでしたが、やはりチームや個人の個性や演技の違いなどで、キッカケを2パターンアジャストするのは、なかなかに骨が折れました。

この公演期間中は、脳のリソースは完全に全部持ってかれている状況でした。本番日の土曜はゲネをして本番×2、日曜はゲネ×2からの本番×2と2日間とも4ステという個人的にはかつてないハードな現場でしたが、何だかこうして振り返ってみると楽しく充実した時間でしたね。
生徒さんたちとは、通し稽古と小屋入りしてからの計5日間だけのお付き合いでしたが、それでもこうして思い返してみるとそれぞれの顔が浮かびます。先生とかは向かないなと思いました。この5日間だから全力でやれましたが、その調子で1年〜2年は体も心も持ちませんもんww

それでは、最後に1曲行きますか。
声優アニソン科のライブでもアンコールの最後の曲だった、卒業にふさわしい曲。[ALEXANDROS]で「ワタリドリ」


posted by アイウチ at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | works | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月18日

WORKS-2025年

□2/15〜16 代々木アニメーション学院大阪「卒業公演2025」照明プラン・オペ
□1/14〜15・1/28〜29 火曜日のゲキジョウ「第9回30GP」舞台監督
□1/25〜26 月曜劇団「生ハムの原木」舞台監督
posted by アイウチ at 13:05| Comment(0) | TrackBack(0) | works | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする