2017年10月24日

「ゆきのふる」とは何か。

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お疲れ様です!相内唯史です。
一週間たってしまいましたが、火曜日のゲキジョウ 30×30
「Critical Creation×まいあがれ」無事終了致しました。
約2年半ぶりの自ユニットでの演出作品。
結構大変だったけど、楽しみました。

さて、お気づきの方も多いかと思いますが、このブログの感じ…。

そうです、大人気作家二朗松田さんのブログでの自作解説テイストです。
いつも読んでて、やってみたかった。なのでタイトルはまんまですww
(キチンと二朗さんには許可もらってますので!)

では、「ゆきのふる」の解説いきますよ。
すっげ〜長いですが、ごゆっくりお読み下さい。


まずは、ご覧頂いていない方でこのブログを読む方もいないとは限らないので、かつ観たけど忘れちゃったっていう残念な方の為に、あらすじから。


【あらすじ】
夜中にふと、目が覚めた。
そっと カーテンを開くとそこには、明るい月の光に照らされて、真っ白な世界が広がっていた。
いつの間にか雪が降り、今は止んで、目に入るあらゆるものが白い雪をかぶって佇んでいる。
どこかで、降り積もった雪が、屋根から落ちる音がした。
さっきから、胸騒ぎが続いてる…。
私の他にも、きっとどこかで、夜中に目が覚めて、この美しい景色に気が付いた誰かがいて、そんな誰かに会えるような気がして、私は急いで準備を済ませると、ドアを開けて夜の中を歩き始めた。


という所から始まるお話です。あらすじというか脚本の冒頭部分を僕が再編集したテキストなんですが、ちょっとそそる出だしじゃないですか?まぁ、この後、まさかの展開が待っているんですが…。

まずは企画のスタートから。
僕の個人ユニットCritical Creationでは、自身のスキルアップも含めて、演出やビジュアル面に凝った実験的だけどドラマ的にはわかりやすい作品を主に扱っています。年に1作くらいはやりたいのですが、実際には2年に1作位のペースになっています。
今回、今シーズンの火曜日のゲキジョウの参加団体がまだあまり集まっていないタイミングで、自ら一枠埋めよう。30分の短篇だったら、忙しい中でも創れるかな?と思って参加を決めました。

さて、脚本はどうしようと考えた時に、直ぐ思い浮かんだ2本がありました。1本は関東の女性作家さんの作品でラブコメ。(こちらも既に上演の承諾は得ていて、来年には上演できたらなと密かに準備を進めています。)
もう一本が今回上演した「ゆきのふる」。2010年2月に大沢秋生さんのユニット「ニュートラル」でイベント参加作品として上演された作品。
初演は、大沢めぐみさんと河上由佳(満月動物園)さんが演じてまして、凛々しくて美しいお二人の姿、そしてファンタジーを纏いつつリアルな内容にもグッと来た作品で、強く印象に残っていました。

この脚本だ!と思ったのと、キャスティングはほぼ同時に思いつきました。山岡美穂ちゃんと水木たねちゃん、少し前にそれぞれ別の機会に出会って、いずれご一緒したいなと思っていた二人がこの脚本と結びつきました。
ご覧頂いた方はお分かりかと思いますが、カタカナで書くと同じ名前の同い年の二人という事で、似ている訳ではないけれど、少し近い性質や雰囲気を持った二人が良いと思っていました。この二人はまさにピッタリでした。

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二人はお互いに初めましてだったのですが、実際に今年3月のフライヤー撮影&顔合わせで引きあわせて見ると、身長と足のサイズがぴったり一緒だったり、大好きなマンガが一緒だったり、別のタイミングで同じ作品に同じ役で出演していたりと、不思議なシンクロニシティでした。
正直、この時点で「勝ったな」と思いました。いや、何にか知りませんがww

脚本とキャストが決まった時点で、演出プランの検討に入りました。演技に関しては稽古場で俳優と創っていくので、この時点では、ビジュアルや効果面を中心とした大枠部分。
まず、客席を含めた劇場の空間全体を一つの画とする事。単に客席を使うとかではなく、観客も二人と同じ雪景色や揺れる地面の上に居るように体感できること。具体的には、客席も含めて降る雪の映像、劇場全体を染め上げて行く照明、客席後方から迫ってくる地響きの音、と言った部分です。
それを実現するとなると、映像やムービング、客席への機材仕込み、スピーカーの増設など、通常の火曜日のゲキジョウのスペックからは大幅にはみ出す事になるだろうと、最初から想像が付いていたのです。だからこそ対バン相手に「まいあがれ」(先に決まってた)を選びました。
室谷さんは、おとなしそうに見えてグイグイ来るイメージがあったので、一方的に迷惑をかけるパワーバランスにならなそうwwだと思ったし、米山と中嶋とは気心が知れすぎているので。
大人げない闘いをする以上、それ以外に関しては大人の配慮をするのが正しい大人です。(名言?!)
こうして、シーンごとのビジュアルイメージと具体的な効果(ココは映像、ココはムービング、色は…、みたいに)をざっくり考えました。欲張り過ぎない、盛り過ぎないがポイント。正直何でもできる状況になってしまうと、画が飽和してしまって、本当に伝えたい内容や感情が伝わらなくなってしまうので、やり過ぎ注意。(それでも今回少しやり過ぎたかもとも思います。)
流れとしては、静かな滑り出しから、徐々に効果を足していき、まずは目で楽しませ世界観に馴染んでもらって、肉声で喋り始ると今度は想定外の内容と効果で驚きを演出し、核心となるシーンでは、画は一切動きません。会話の内容と二人の微細な表情、声だけに集中してもらいたいからです。

これと並行して、選曲を進めます。
選曲が一番自信があって、楽しい部分でもあります。莫大な候補の中から絞り込むために、毎回何かの縛りを決めています。今回は、初演のニュートラル版でかかり印象的だったPerfume「SEVENTH HEAVEN」に敬意を表して、この曲を外したPerfume縛り(厳密には作曲家の中田ヤスタカ縛り)としました。

僕個人としては、演出として狙いすました使い方(クロムモリブデンみたいな)を除いて、知ってる曲・わかりやすい曲が劇中でかかると途端に覚めちゃうタイプなので、今回は結構難しい縛りだったのですが「Perfumeっぽいな、まぁアイウチPだし…」までの範囲で、具体的な曲名はわからないレベルが目標点でした。もちろん、そのシーンの画に合わなくては何の意味も無いのですが。まぁそこは立場上「僕がPerfumeを一番うまく使えるんだ!」(アムロ風)と言っておかなくてはいけないだろうとww
もう一つは、Perfumeに代表される中田ヤスタカの楽曲が、インスト(カラオケ)で聞くと、ボーカル入りとは少し印象が違い、ボーカルのカゲに隠れている細やかな音や遊びが入っているという事をこっそりアピールしたいという想いもありました。そしてそのことが曲名言及を難しくするうえでも効果があるだろうと。

では、セットリストを紹介していきましょう。
まずは、キンソン(M0)から。

●M0:Perfume「マカロニ」(インスト)

キンソンは一番最後に決めました。厳密に言うと、他の曲は3月の顔合わせの時点で確定していましたが、キンソンだけは稽古が進んでから決定しました。シングルのカップリング曲ですが、Perfumeの曲の中では比較的知られた曲なので、少し躊躇がありましたが、サビからのあおりと暗転が最も気持ちよくしっくり来る事が決め手になりました。
また、この曲の歌詞は恋愛を語っているとは思うのですが、歌い出しの最初の部分は、この作品のシーンや二人の関係にマッチする部分があるなというのも選曲理由の一つです。まぁインスト版ですし、「ゆきのふる」の二人は名前が一緒なので、そりゃ呼び合ったら照れるでしょうがww
気になる方は歌詞もご参照ください

●M1:Perfume「23:30」(インスト)

女1が、家を出て夜の雪景色の中を歩きだす所でかかる曲です。「ワンルーム・ディスコ」のカップリング曲なので、Perfumeファンでないと分からないのではないでしょうか?彼女らの曲にしては珍しいジャジーでメロウな曲調とリズムが深夜の雪道散歩にぴったりではないかと。何か少し寒い(温度の低い)気配もしますし。23:30という時間は少々気になりますがww
また、この曲も歌詞が「ゆきのふる」とリンクしています。「いつかは昇るよ 新しい日が来る」物語のラストシーンをあらかじめ暗示させています。(ってわかる人まずいないけどww)我ながらちょっと神がかってる!
気になる方は歌詞もご参照ください

●M2:Perfume「575」(インスト)

女1と女2が出会って、二人で街を歩きだす所から、周りが見渡せる丘に登り、雪が降ってきて駆け出し、雪合戦をして疲れはて、雪面に横たわるまでのパフォーマンスっぽいシーンにかかる曲です。
この曲も「VOICE」のカップリング曲。カップリング万歳!ボーカル入りは実際に七五調で、ラップの部分もある、リリース時点ではPerfumeの中でも異色の曲でした。
シーンの動きは全て曲合わせで、三人で創りました。走り出すところや、雪合戦部分の高揚感など、曲の進行とシンクロしているかと思います。
この曲は特に歌詞とはシンクロしていません。強いて言えば、「おやすみ おはよう」って出てきます。
気になる方は歌詞もご参照ください

●M3:中田ヤスタカ / Perfume「Journey」(インスト)

物語の核心を描くシーンの頭から最後まで流れ続ける曲です。この曲のみ単独ではネット上にありませんでした。のでこの曲が使われているPerfumeのドキュメンタリー映画の告知にリンクしておきます。(映画もオススメ)
そもそもこの曲、Perfumeのドキュメンタリー映画の為に中田ヤスタカによって書き下ろされた曲で、映画のDVD&BDの初回限定盤にのみ付属するCDでしか音源化されていないというマニアックなものでして…。流石にこの曲が解った人はほぼいないんじゃないでしょうか。
しかも「ゆきのふる」の台詞とシーンの進行に合わせるために、曲のフレーズをループさせたり、一部カットしたり入れ替えたりと編集の大手術を施しました。
が、実はわかりやすいポイントもあって、この曲は今回の他の使用曲と違って、最初からインストとして書き下ろされた曲で、メロディもオリジナルのものですが、部分部分にPerfumeの楽曲のフレーズが少し印象を変えて差し込まれています。たとえば「Dream Fighter」「ポリリズム」です。
ハイ!このポリリズムに気が付いた人はいたのではないでしょうか?ってか気づいて欲しい!
歌詞で言う所の「くり返す このポリリズム」のフレーズが、女1の台詞「同じことを繰り返してたような」とリンクさせています。しかもドンピシャを狙ったわけではないのに、稽古を進めてみるとこのセリフの前か後に曲のこのフレーズが百発百中で来るのです!
もともとこのシーンは、演技優先で、一切曲合わせするつもりはありませんでした。曲の終わりがシーンの終わりに重なりさえすれば良い。しかもそのために曲の方を編集するという方法を取りました。実際稽古をしていくと、二人のその時の感情や、手前までのシーンの状況(心・体を含めた両方)、相手によって、毎回芝居は変わりましたが(あらかじめ三人で設定したOKラインからは外れないように)、二人の間の取り方や台詞の速さが違っても、必ず最後には曲の最後の一音の前に女2=たねちゃんが「おやすみなさい」と言い、減衰していくその一音が途切れるかどうかという所で女1=美穂ちゃんが「おやすみなさい」と応えるように自然となって行きました。
そして、程度の差はあれ、稽古から本番までこのシーンでの美穂ちゃんの涙率は100%です。それほど芝居に入り込んでくれている美穂ちゃんを素直に凄いと思うとともに、自らの運命を知り、未練を残しながらも女1には前に向いて進んで欲しいと女2=たねちゃんがかける「生きてるって いいね」という柔らかな言葉も珠玉だったと思います。
曲に引用されているポリリズムのフレーズは極一部ですが、歌詞全体を読んで頂くと「ゆきのふる」の世界観と微妙に重なりあっている事を実感して頂けるのではないでしょうか?
「ポリリズム」の歌詞

●M4:Perfume「Baby cruising Love」(インスト)

ラストシーンから、コールまでの作品最後の曲です。「空に向かって手を伸ばす二人。 一日が始まる。 / おしまい」台本のト書きを読んだ時から、画は完全に浮かんでいました。決してストレートなハッピーエンドとは言えないこの作品を最も美しく希望を持って締めくくる画、その一瞬を彩る曲は?
意外にも直ぐに思い浮かんだのでした。「ゆきが降ってる」の台詞の後に、降り落ちてくる雪のようなイントロのメロディ、嬉しくなって外に出て行く準備をする高揚感、そして一瞬のブレイク(間)が絶妙の暗転ポイントになるこの曲。我ながら完璧だと思います。
この曲は、シーンとの親和性重視で歌詞とのリンクを重視してはいませんが、歌詞を読んでみると、ちょっとシンクロする部分もあるのが不思議です。
気になる方は歌詞もご参照ください
このシーンの解釈に関しては難しい所です。お客様の中にも「?」と思われた方もいるのでは無いでしょうか?ト書きには「明りがつくと、二人並んでベッド眠っている。やがて二人とも目を覚まし、カーテンを開く。」としかありません。このシーンの意味するところはお客様それぞれで良いのですが、私たちも何パターンも考えました。A:あの雪の夜の邂逅を通じて、女2の存在を感じている女1。B:二人のうち一人が偶然命を落とし一人が偶然命を拾った、偶然分かれた二人(生き残った場合)の運命が重なり合っている。C:あの日が無ければ、あり得たかもしれない未来。(つまり二人がどこかで出会って友人になった未来)
みなさんはご覧になられてどのように感じられたでしょうか?

以上、セットリストと共にシーンのイメージや稽古の過程をご紹介して参りました。

続いて頂いた感想などを参考に、もう少しメイキングを掘り下げてみます。(まだ書くの!?)

「ゆきのふる」まとめ

演技に関しては、基本ラインとして、完全にリアルに寄せはしないが、伝える為に必要な最小限を除いて不自然な誇張はしないという事を軸にしました。
女2=たねちゃんは、非常にバランスの難しい役で、子供でも大人でもいけない。しかも作中で、前半は自分自身の存在を理解していないため、命を失った子供の頃の感じが強い→後半自分の運命の帰結を思い出してからは大人に近い、という事をあまり観客には意識させずに見せたいという部分があり、それに応えてくれたと思っています。
女1=美穂ちゃんは、前半は自分のナレーションに合わせて芝居をするという、簡単そうで実は難しい事を丁寧にやってくれました。それでいて後半は、感情をさらけ出しながらの長台詞。感謝しかありません。
配役は最初から決めていましたが、稽古の途中では、役を入れ替えてやってみたことがあります。お互いの役や芝居への発見に繋がるのではないかと思い。実際に収穫がいくつもありました。

前半が、ナレーションだけで進行していくことに賛否を頂きましたが、これは台本上の指定です。ただ、ナレーションという指定だけで、実は女1なのか女2なのか、あるいは他の誰かなのかの指定は無いのです。物語を誰の視点で展開するかの重要な部分ですが、結論としては一番ストレートでわかりやすい女1(本人)に語らせる事にしました。
実は肉声で演じる事も検討してみたのですが、しっくり来なかった事と、肉声を発した所から、物語が動き出す事のドラマチックさを考え、ナレーションが正解だと判断しました。てか、初めて聞く二人の生声が、雪合戦でキャッキャしてる所、良くないですかww
ナレーションは、稽古初日にまず録音し、それで稽古を進めながら、芝居の尺や動きの表現が固まってきてから再度収録し直すという二段階をとりました。

また、作品自体の尺が短かったために、一部シーンを創作して加える案もありました。例えば、あの日を二人とも生き延びていた可能性の未来とか、生き残った方が逆の場合とか…。最終的には台本的には何も足さない何も引かないがベストだと判断し、22分という上演時間に落ち着きました。

稽古は、難航するんじゃなかろうか?と思っていたのですが、初日こそ三人で、どこからどう手をつけて行こうか…。という感じになりましたが、次の稽古ではほぼシーンの課題と概要が見えて大まかに動きがつき、方向性が固まりました。個別のシーンではなく、流れが大切な作品なので、後半は通しばかりという感じになり、逆に飽きが来て芝居が崩れてしまわないようにと、稽古を間引いて、数日寝かせたりしました。
スムーズに稽古が進行できたのも、微妙なニュアンスで説明し、わりかしOKエリアが広い割に、妙に細かい部分のある僕の演出に、しっかり付き合ってくれた二人のステキな女優さんのおかげです。ご一緒できた事本当に感謝です。また別の作品でもご一緒したいと強く思っています。

最後に、この作品は大沢秋生さんが、ご自身の体験に基づいて書かれたそうです。阪神淡路大震災の時、身内と同じ名前の人が無くなったと報道されていて、一緒に居たので大沢さん自身は生きている事を知っていましたが、連絡の付かない方たちは心配されていたそうです。
このお話は実は、終演後に聞いたのですが、僕が初演を観た時に魅かれた理由の一つに、僕自身の体験も重なっていたのかもしれないと、大沢さんのお話をうかがいながら思い出しました。
1985年8月、日本航空123便墜落事故。僕の幼馴染とその家族が同じ日に東京から大阪へ飛行機で移動すると聞いていました。そして事故の報道。まさか乗っていて巻き込まれていたりはしないだろうか?と子供ながらにとても心配したことを覚えています。それほど時間がかからず、その便では無く無事だった事を知るのですが、連絡がつかない間(携帯とか無い時代なんで)大変不安でした。

上演した日は、対バン相手が「まいあがれ」である事と、我々座組みのスケジュールの都合でしたが、奇しくも17日。阪神淡路大震災から22年と9か月目でした。あの日亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
観終って劇場を出た後、生死に関係なく今すぐは会えない誰かの事を思うような、そんな時間が生まれていたら上演した甲斐があるというものです。

さて、自分でも書いてて恐ろしいほどの長文お付き合い頂きありがとうございました。

それでは、最後に一曲お聞きください!
今回、劇中使用(もちろんインストの方です)の候補でしたが、未使用の一曲。
Perfumeで「願い」、歌詞に注目して下さい。部分的にまるで「ゆきのふる」の二人の事を唄っているように感じるかもしれません…。

「願い」の歌詞

posted by アイウチ at 00:56| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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