2025年12月13日

「クリスマスギャロップ」とは何か?照明編

はい。最近定番になっている、現場振り返りシリーズ参ります。
今回は、2025年12/5(金)〜7(日)開催の、三等フランソワーズ「クリスマスギャロップ」に照明(と舞台監督)として参加しました。
いつものように、主に照明の視点から作品を振り返ります。

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この「クリスマスギャロップ」という作品は、2015年の火ゲキでの初演から、短編バージョン(約30分)としては4回、長編版(約85分)としては2019年初演で、今回が二度目の上演という、カンパニーの代表作です。
再演を繰り返すのは、単に作者が気に入っているというだけに留まらず、多くの人に好評を得て、細かなブラッシュアップやキャストの入れ替わりが作品を長く輝かせているという事だと思います。
実際、僕は全バージョンを観たり関わったりしていますが、大好きな作品の一つです。

そして、今回は大きな挑戦が二つ。
まずは、短編版や初演長編版からキャストが大幅に変わり、ある意味ドリームチームな豪華キャスティング!
確かな技術と魅力を持った俳優さんたちとは言え、何度も上演されて評価の高い、ある程度イメージの付いた作品に挑戦する俳優さんたちもプレッシャーがあったでしょうし、演出する中川さんも見比べられるハードルがあったようです。(販売版パンフレットにそんな感じのコメントが…)
結果的には、舞台上以外の空気感も含めて素晴らしい座組だったんじゃないかなぁ〜

もう1つは舞台セットを建てること。短編版は当然火ゲキフォーマットなので、最小限の置き道具のみ。前回の長編版も素舞台にカウンターやテーブルが配置される形でしたので、大きな変化です。
中川さんから相談を受けて沢山の候補の舞台美術さんの名前をあげましたが、最終的に引き受けてもらったのが今大活躍中の田尻尚大さん。本当にステキなセットでみんなテンションが上がっていました!
テンションが上がりつつ、僕はプレッシャーがある訳で、下手な照明を当てられない…。
余談ですが、現場で田尻さんと出身地が一緒なのが発覚し、ちょっと盛り上がりました!

普段、彗星マジックなど、素舞台抽象の空間でいくつも場面や時間の変わる作品を担当する事が多く、照明だけで空間や時間をイメージさせるっていうのは、ある程度得意というか自分の照明の画つくりの基本になっているのですが、その分セットのある作品の経験やスキルが不足しておりまして、普段よりも図面も悩みました。

ラストの一瞬を除いては、全て同じ空間で時間経過だけがある作品なので、長時間持つ画じゃなきゃいけない。画はセットが助けてくれる側面もある一方、灯りで違和感や変な特徴が出ても良くない。
その辺とストーリー&登場人物のキャラクターを考えて、セットタッチなどに、少しムラのある地灯りを設定しました。

ここは基本「聖美」のお店ですから、ガサツな彼女が部屋中ベタっと明るい照明の店をやっているとは思えない…。そして夜になるとバーですから、少し落ち着いた感じになる。とは言えわざわざ昼と夜で照明機器を使い分けているほど立派な店でも無かろう。
カウンターとかテーブルの位置にペンダントライトとかあっても良い気もしたのですが、そうするとちょっとお洒落過ぎる気もする。演技やお客さんの視線の邪魔にもなりそう。

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↑こういう感じのやつね

そうすると、レールダクトとかのダウンライトでテーブルやカウンターの上、ドアや壁際を照らしているんでは無かろうかとイメージ。そういう雰囲気の灯りを設定しました。

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↑こういうイメージね

写真で見るとめっちゃ壁の明るさに差があるように見えるのですが、実際に肉眼ではここまで大きな差は無い感じにしています。(カメラのセンサー怖ぇ〜。めっちゃ光量差強調してくるやん!)

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建物の立っている場所の設定は台本には無いのですが、画にアクセントをつけるのに、客席側の壁に窓があって道路に面している設定にして、日差しや街路灯の灯りが差し込んでいるという事にしています。

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ちなみに客入れの灯りはもう少しムラを強調して窓の差し込みはあえて抜いています。逆にカウンター・テーブル・ドア・クリスマスツリーなどにタッチの灯りが入って少し浮き立つようにしています。

写真は無いんですが、個人的に気に入っている画は、二場の頭で灯りの消えた店にジュンとキャシーが入って来る時の灯りですかね〜
一瞬のシーンですが、めっちゃ細かく微調整しました。

演出的に指定されているキッカケは主に3か所だけなのですが、照明の意図で幾つか変化させています。
一つは、一人取り残された花が店のカウンターで一人芝居をする所。わざとらしくない程度にカウンター側が僅かに明るくそれ以外を少しトーンダウンさせています。彼女の意識がカウンター周辺だけに集約されて、店に入ってきたマリーに気づかない事を画的にもサポートする意図です。
もう一つは、ラスト前でジュンと一果のやり取りの中で、Mがかかる時にじんわり灯りがダウンします。ほんの僅かなので、気づかない人の方が多い程度の変化ですが、灯り的にはこれがラストシーンに繋がっていく布石になります。
ここまでは基本リアルの範囲を逸脱しない形で画を作ってきましたが、ラストシーンでジュンの胸に飛び込む一果はバックサスで印象づけています。演出指示では地灯りのままですが、照明的にここくらいは色気出して良いかなとww そしてそれを見守る花とマリーをサスで抜いて暗転。

そのあと逆にこちらは演出指示でキャシーと聖美が映画を見ている画はスクリーンの灯りの反射をオーダーされています。この二人の関係性良いですよね…。中川さんもお気に入りなのでしょうか? この二人を中心にしたスピンオフ作品「真夏のアイドル」が実は過去の火ゲキで上演されています。

さて、今回ほぼ全ステージ満席でお客様の評判も良い公演になり、個人的にも地味に割と頑張ったと思っているのですが、一つだけ心残りも。テーブルの質感がどうしてもセットと違うので灯りが入るとさらに浮き気味で…。あとから布のテーブルクロスとか掛けたら良かったんでは…。と気付きまして。もしも再再演があったら、その時こそはテーブルも舞台美術で作ってもらうか、テーブルクロス!

では、最後に一曲行きましょう。
クリスマスイブと言えば山下達郎ですが、それをサンプリングしたKICK THE CAN CREW「クリスマス・イブRap」。


超余談なのですが、この曲がリリースされた2001年11月、初のINDEPENDENTが開催され宮沢賢治の「永訣の朝」をモチーフとした「Good Bye Morning〜「永訣の朝」より〜」山口敦志(劇創ト社)×城田邦生(劇創ト社)が上演されました。その劇中でかかったのがこの「クリスマス・イブRap」。とてもしっとりした作品だったので、この曲合うのかな?と思われるかもしれませんが、これが絶妙にぴったりで(イントロからパッヘルベルのカノンなのが良いのかも。オリジナルでは間奏部分でサンプリングされてますが、それを冒頭に持ってきた構成が神曲!)、歌詞の中にも「走りだせ 銀河鉄道!」って入っているのです。しかも今聞き返して気づいたのですが、2番の歌詞には「一人芝居」ってワードもあるんですね。ヤバ!
この曲のリリースが2001年11月7日で、2週間後の11月22日初日の作品に選曲するって凄くないですか?その選曲が音響家の谷口大輔さん(T&Crew)です。当時、劇創ト社などで音響プランオペしていて、時代劇やSFのエモいシーンで場面や心情に曲や歌詞がドンピシャの最新J-POPがかかるのにシビれてました!
posted by アイウチ at 12:03| Comment(0) | TrackBack(0) | works | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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