2011年01月23日

souvenirはこんなお話 [追記]

■ souvenir スーベニール■

自分の好きなものを堂々と「好き」と言いづらくなってしまった世界。
ひなびた商店街にある喫茶店では、今日もマスターがコーヒーカップを磨いている。
ちょっとした秘密。
メニューの一番下には「スペシャリテ」(とっておき)。
スーベニール[贈り物・形見]。
それはコーヒーの香りと共にお贈りする、とても静かで優しい形見分けの物語。

souvenirは1話完結の全4エピソードで構成。
各エピソードを短編として、上演したのち、再構成して2時間弱の作品を製作予定。


■ souvenirの世界観〜ちょっとまじめな話

作品の底にあるちょっと重くてまじめな話をしますが、souvenir自体はとても静かで優しい物語です。毎エピソード気楽に観ていただける40分前後を予定しています。

souvenirは、言論の自由に制限が生じてしまった少し先の日本を舞台にしている。
少年犯罪の増加や、大人のモラル低下など、現在の状況に端を発して「低俗あるいは悪意ある図書が与える影響から青少年を守る為の流通禁止に関する特別措置法」通称「指定図書流通禁止法」が成立し、数年が経過した社会。
法案の制定時には、憲法に明言された「言論の自由」に反するとして反対運動も盛り上がったが、最終的には政治的無関心やさらなる犯罪の低年齢化が要因となって成立した。一部のメディアや活動家たちを除いて、今では数ヶ月に一度の流通禁止指定図書の発表も日常として受け入れられてしまっている。

僕は、この作品を通して大上段に社会派ぶるつもりはない。
ただ「自分の大切に思うものを公の権力に否定される」のって辛いな。という想いとそういった事に無関心でだけは居たくないという想いがある。

こんな経験は無いだろうか?
友人たちとの会話の中で、自分の好きなものが否定される場面。
なんと無くその場の空気を読んで曖昧に相槌を打ったりして、後から後悔したり傷つく。
本当に大切なものだったら正面切って闘えるんだろうけれど、それなりに好きなものだったら、場の空気や友人との関係を優先してしまったり、でも実はそれなりに好きなものって実はたくさんあって実は貴重だったり・・・。

また、こんな経験もこの作品に影響している。
僕が子供の頃好きだった絵本に「ちびくろサンボ」がある。
様々な出版社から色々なバージョンが販売されていたこの絵本は、1988年を境に一時期、書店や図書館から姿を消した。黒人差別の本だと指摘され、当時の世相から出版各社が自主的に回収した為だ。(注:現在は復刊されている)僕は、その時何だか悲しかったし違和感を感じた。

表現の自由を盾に、何でも表現してよいとは思わないし、明らかに卑猥だったり表現する価値が無いと感じざる負えない様なものは存在すると思う。でも、仮にも表現の場の端っこに席を置く人間として、こういうニュースや話題に無関心ではいられないなぁと思う。

放送禁止用語や自主規制など、じわじわと表現の自由の外枠は狭められているような気がしてならない昨今、いつかsouvenirが描くような世界にならないとは言い切れないような気がしてしまう。

souvenirでは、この法案成立の激動に巻き込まれた人たちと、すでに法案成立した日常を生きる人たちの交流が描かれる。

繰り返しますが、souvenirは難しいお話でも重苦しいお話でもありません。ただ自分の想いに素直でいたいと生きる人たちの静かで優しいお話です。

[2011年1月追記]
今、東京都青少年健全育成条例改正やその周辺の問題が大きく取りざたされていますが、この「souvenir」という物語のプロットを作り上演を開始した2008年の段階では、まさかここまで今のような深刻な事態になるとは思っていませんでした。
もともと上にも書いているように、社会派ぶるつもりは無く、「自分の大切に思うものが公に否定される哀しみ」を描けたら良いなと思っていて、加えて表現の規制などに少し興味や危機感を持ってもらえたならなお良しくらいのつもりでした。
作品のたどり着いたところは随分と変わりましたが、大好きな小説家、有川浩さんの図書館戦争シリーズにインスパイアされて産まれたプロットです。
図書館戦争シリーズは本当に大好きなのですが、いくら表現の自由を守るためとはいえ、図書館が武装し実質内戦状態になるというのは、現実にはおこり得ない、おこってはいけない事です。
でも、政策によって表現への規制がじわじわと社会を蝕むことは、リアルに起こり得るのではないか?そして、そういった規制のほとんどが「善意」や「正義感」からスタートし、やがてその最初の理想が歪められていってしまうという現実…。そうして考えた設定でした。
今、完全に現実が物語に追い付きつつあります…。相変わらず、社会派ぶるつもりは毛頭無いのですが、今まさに上演する意味のある作品にしたいなとは思っている今現在です。
posted by アイウチ at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | Critical Creation | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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